2010年代の音楽——「多様化」と「発見」
2010年代の日本音楽を一言で表すなら「多様化の時代」だろう。
CD売上の長期低落、違法ダウンロードの蔓延、そしてYouTubeとニコニコ動画による音楽発信の民主化——業界にとっては試練の10年だったが、リスナーにとってはこれまでにないほど多様な音楽に出会える時代でもあった。
🎸 2010年代の特徴
- バンドリバイバル:ロックバンドが再び表舞台へ(RADWIMPS、ゲスの極み乙女。、[Alexandros]等)
- ソロアーティストの多様化:星野源、あいみょん、米津玄師(10年代後半〜)
- アニメ・映画タイアップ:「君の名は。」「進撃の巨人」等で世界市場へ
- ストリーミング黎明期:2015年にSpotify日本上陸→消費行動が激変
RADWIMPS——世界を変えたアニメタイアップ
2001年結成、野田洋次郎を中心とするRADWIMPSは、2010年代に入り着実にファン層を拡大していたが、2016年に転機が訪れる。
新海誠監督の映画「君の名は。」の音楽をすべて担当したことで、RADWIMPSは日本を超えた存在となった。
「前前前世」は中国・台湾・東南アジアで爆発的にヒットし、日本のロックバンドが映画音楽を通じて世界に届く可能性を証明した。
主な作品:
- 「ふたりごと」(2006年)— インディーズ時代から続くコアファン
- 「おしゃかしゃま」(2011年)
- 「前前前世」(2016年)— 「君の名は。」主題歌
- 「スパークル」(2016年)
星野源——マルチアーティストの新しい形
俳優・作家・ミュージシャン——星野源は「ジャンルを超える」存在として2010年代を象徴するアーティストだ。
ソウル・ファンク・シティポップを基盤としながら、現代的なサウンドとプロダクションで独自の世界観を構築。
🌟 星野源の転換点
- 「恋」(2016年):ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」主題歌。「恋ダンス」で社会現象に
- 「アイデア」(2018年):NHK連続テレビ小説「半分、青い。」主題歌
- 「うちで踊ろう」(2020年):コロナ禍に自宅録音で発表→コラボ動画が世界的に拡散
ゲスの極み乙女。——複雑なのに踊れる
2012年結成のゲスの極み乙女。は、複雑な変拍子とポップなメロディを共存させる独自スタイルで注目を集めた。
川谷絵音のソングライティングは従来の「わかりやすいJ-POP」の常識を覆し、「難しいのに中毒性がある」音楽として若いリスナーを獲得。その影響はindigo la End、ジェニーハイなど川谷の別プロジェクトにも波及した。
代表曲: 「猟奇的なキスを私にして」(2014年)/ 「私以外私じゃないの」(2015年)
その他の重要アーティスト
| アーティスト | 活動期 | 特徴 |
|---|---|---|
| [Alexandros] | 2004〜 | 英語歌詞を多用したロック。フェス文化を牽引 |
| amazarashi | 2008〜 | 秋田ひろむの文学的歌詞とシューゲイザーサウンド |
| Official髭男dism | 2012〜 | ピアノポップ。2010年代末〜2020年代に爆発的人気 |
| King Gnu | 2015〜 | クラシック〜R&Bまで横断する複雑なポップ |
| あいみょん | 2012〜 | アコギ一本の弾き語りから大衆的シンガーソングライターへ |
| 米津玄師 | 2012〜 | ボカロPからメジャーへ。2010年代末の最大スターに |
2010年代の制作環境——DTMの民主化
2010年代は「自宅で本格的な音楽を作れる」環境が誰でも手に入る時代になった。
GarageBand(無料) の普及、iPhoneでの録音、YouTube/SoundCloud/ニコニコ動画でのセルフリリース——従来は必要だったレコード会社との契約なしに、音楽は世界に届くようになった。
🎛️ 2010年代の定番制作環境
| DAW | Logic Pro X、Ableton Live、FL Studio |
| オーディオIF | Focusrite Scarlett(低価格化が急速に進んだ) |
| MIDIキーボード | ARTURIA、AKAI、Native Instrumentsが普及 |
| プラグイン | Serum(2014年〜)が定番ウェーブテーブルシンセに |
| マイク | Audio-Technica AT2020がコスパ抜群として普及 |
2010年代の終わり——ストリーミング元年
2015年のSpotify日本上陸を境に、日本の音楽消費は急速にストリーミングへシフトしていった。
「CDを買う」という行為は特別なものになり、ライブ・グッズ・ファンクラブが収益の柱となる新時代が到来。2010年代末には米津玄師の「Lemon」がストリーミングで10億回再生を突破するなど、「再生回数」が音楽の価値指標になった。
この変化が次の時代——YOASOBIや髭男、King Gnuが活躍する2020年代J-POPの黄金期——への土台となった。
2010年代バンド・インディーズの音楽を聴く・学ぶ・機材を揃える
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2010年代バンドの音楽的特徴——技法の深堀り
RADWIMPSの楽曲構成の秘密
野田洋次郎の楽曲は「普通のロックバンド」と何が違うのか:
- 変拍子の自然な使用:「おしゃかしゃま」の複雑な拍子変化を聴き手に感じさせない
- 歌詞とメロディの密着度:日本語の発音・アクセントとメロディが完全に一致
- ピアノとギターの共存:ピアノを単なる伴奏でなく対等なリードとして使う
「前前前世」の楽曲解析:
BPM:170
キー:Aマイナー → サビでCメジャーに(平行調転換)
構成:アコースティックイントロ → バンドアレンジへの転換
特徴:映画の感情に沿った動的アレンジ
ゲスの極み乙女。の変拍子をDAWで作る
川谷絵音が多用する変拍子パターン:
基本は4/4拍子→途中で5/4や7/8に切り替わる
例:4/4 × 3小節 → 5/4 × 1小節 → 4/4に戻る
これをループ感なく行うのがゲス流
King Gnuの「多ジャンル横断」を技術的に見る
常田大希(King Gnu)の音楽的引き出し:
- クラシック:桐朋学園大学でコントラバスを専攻
- ジャズ:テンションコードの理解が深い
- R&B:井口理のボーカルスタイルに反映
- EDM:ビートプロデューサーとしての顔も持つ

